障害の重い肢体不自由の子供たち、「わずかに動かせる手や足、腕の動きを、大きな動き、力に変えられないだろうか」との思いから出来上がったのがこの作品です。ニュートンが発見した万有引力の法則を使って、小さな力を大きな力に変える装置です。
コマのグリップのボタンを指で押す代わりに、ボタンを棒で叩いてコマを回そうというものです。振り上げた棒は後方に少し倒して立ててあります。棒を直接糸で引こうとすると、糸が伸びることもあり、しばらくの間、力を入れ続けたまま糸を引っ張っていなければなりません。わずかに動く身体の部位で、力を入れ続けて糸を引くというのは難しいことです。仮に入れ続けても、入力された力だけでは、棒が倒れるだけの強さにはならないこともあります。そこで、わずかな力だけでも確実に棒を引き倒すことができるように考えました。
落下すれば確実に棒を引っ張り倒してくれる重りを糸の途中に付けけました。この重りを不安定な状態で設置し、わずかな力が加わればすぐに落ちるようにセットします。こうすることで、ある程度の力を持続させなければならない状態から、少しの力で引くだけで棒が引き倒せるようになります。ここで使ったものは、釣りで使うルアーで40gのものです。魚の形をしていて丸みを帯びていますので、うまくセットしないと落下してしまうこともありました。
学校での授業参観の時には、まだルアーを使う発想はありませんでした。単4乾電池を使っていたのでコロコロ転がってしまい、子どもが引く前にコマが回ってしまうことが何度もありました。授業参観の後、家でも使ってもらうことにしました。卒業式の日にお母さんからこんなお手紙をいただきました。「少しの力、少しの動きで、大きなリアクションのある数々のおもちゃ、ありがとうございました!!家でよくコマを回しています。」
ゼンマイ式のコマであれば対応できるのですが、1台ずつのコマのグリップ部分の大きさに対応する必要があります。いろいろな大きさのグリップに対応できるように何か良いアタッチメントの工夫があればと考えています。また、グリップ部の頭を木の棒で「たたく」方式であるため、ゼンマイバネの入ったグリップ部分の破損が考えられます。実際に「子供会景品用 25個入り 送料込み1800円」程度のコマだと3回くらい試すと壊れてしまうことが何度もありました。
木の棒を初めからグリップ部に乗せておいてグリップ部の頭を「上から押す」方式も考えたのですが、ゴルフボールを落とした程度ではだめでした。硬式野球ボールくらいの重さの重りでないと無理のようで、これでは機械がひっくり返ってしまいます。
コマも、「回るだけ」「回って光る」「回って光って音も出る」といろいろな種類があります。動画で使っているコマは、100円ショップの物(写真:左)で「回って、光って、音も出る」というものですが、現在販売されていません。残念です。
ここで紹介したコマ回し機も授業参観時からは改良3作目です。まだまだ改良の余地があります。